半導体業界は「デバイス(半導体そのものを作る)」「製造装置(作る機械を作る)」「材料(作るための素材を作る)」の3つの層に分かれています。同じ「半導体業界志望」でも、層が違えば仕事内容も、求められる専攻も、業績の振れ方もまったく別物です。
2026年時点の姿を一言でまとめると、生成AI向けの需要が装置・材料・メモリを押し上げる一方、EV向けのパワー半導体は調整局面にあるという二極化が起きています。この記事では主要13社を1つの表で比較し、学科別の狙い目と選考対策までを整理します。
「半導体は今アツいらしい」——就活でそう聞いて志望業界に入れたものの、企業研究を始めた途端に手が止まる人は少なくありません。東京エレクトロン、キオクシア、信越化学。名前は知っていても、それぞれが半導体のどこを担っているのかが見えないままだと、志望動機は「成長産業だから」で止まってしまいます。
この記事は、理工系学生が半導体業界を「構造」から理解し、自分の専攻と接続できるようになることを目的にしています。数値は各社の決算短信・有価証券報告書など一次情報をもとにまとめ、出典は記事末に掲載しました。
1. まず押さえる|半導体業界は「3つの層」でできている
半導体は、1社ですべてを完結させることがほぼ不可能な製品です。1枚のウェハーが製品になるまでに数百の工程を通り、その各工程に専門メーカーが存在します。そのサプライチェーンを大きく3層に分けると、業界の地図が一気に見通せるようになります。
① デバイスメーカー(半導体そのものを作る)
メモリ、イメージセンサー、マイコン、パワー半導体などの「製品」を設計・製造する層です。自社工場(ファブ)を持つ企業と、設計に特化して製造を外部委託する企業があります。日本勢はメモリ(キオクシア)、イメージセンサー(ソニー)、車載マイコン(ルネサス)、パワー半導体(ローム・三菱電機・東芝)に強みが集中しています。
② 製造装置メーカー(半導体を作る機械を作る)
成膜、露光、エッチング、洗浄、切断、検査——各工程の専用装置を作る層です。日本企業の国際競争力が最も高いのがこの層で、装置1台が数億〜数十億円という高単価ビジネスであるため、利益率も飛び抜けています。顧客は世界中のファブなので、海外売上比率が9割を超える企業も珍しくありません。
③ 材料メーカー(作るための素材を作る)
シリコンウェハー、フォトレジスト(感光材)、研磨材(CMPスラリー)、封止材、高純度薬品などを供給する層です。ここも日本のシェアが世界的に高く、「日本の材料が止まると世界の半導体が止まる」と言われるほどの寡占構造を持つ製品が複数あります。
- 前工程:ウェハー上に回路を作り込む工程。成膜・露光・エッチング・洗浄など。微細化競争の主戦場。
- 後工程:ウェハーを切り出してパッケージに封止し、検査する工程。近年はAI半導体の性能を左右する「先端パッケージング」として重要度が急上昇。
近年AI向けで伸びている企業(ディスコ、レゾナック、アドバンテストなど)は後工程に強みを持つ点が共通しています。
2. 【比較表】半導体業界の主要13社を1つの表で比べる
デバイス・製造装置・材料の主要13社を、業績・待遇・働き方の9項目で横並びにしました。
色付き太字=業界内で特に高い水準の項目。 売上高2兆円(20,000億円)以上/営業利益率40%以上/平均年収1,500万円以上/有給消化15.0日以上を基準にしています。
※ 表は横にスクロールできます(スマートフォンの場合)
| 企業名 | 区分 | 決算期 | 売上高 (億円) |
営業 利益率 |
平均年収 (万円) |
主な勤務地 | 残業 (月) |
有給消化 (日数/率) |
主力事業・特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京エレクトロン | 装置 | 26/3 | 24,435 | 25.6% | 1,354 | 東京・山梨・岩手・宮城・熊本 | 30.4h | 13.8日(69.1%) | 塗布・現像装置で世界シェア約9割。国内首位・世界3位の総合装置メーカー |
| アドバンテスト | 装置 | 26/3 | 11,286 | 44.2% | 1,049 | 東京・群馬 ほか | 16.3h | 14.2日(70.8%) | 半導体テスタで世界首位級。AI・HBM向け需要で売上1兆円を突破 |
| ディスコ | 装置 | 26/3 | 4,369 | 42.3% | 1,672 | 東京・広島 ほか | 39.5h | 14.2日(70.8%) | ウェハーを切る・削る・磨く装置で世界的シェア。6期連続で過去最高 |
| SCREEN HD | 装置 | 26/3 | 6,057 | 20.2% | 1,063※1 | 京都・滋賀 | 22.2h | 15.0日(75.2%) | ウェハー洗浄装置で世界トップ級。半導体装置事業が売上の8割超 |
| レーザーテック | 装置 | 25/6 | 2,515 | 48.8% | 1,681 | 神奈川(横浜) | 38.7h | 13.1日(65.4%) | EUVマスクの欠陥検査装置をほぼ独占。利益率は業界最高水準 |
| 信越化学工業 | 材料 | 26/3 | 25,740 | 24.7% | 876 | 東京・群馬・新潟・福島 ほか | 27.3h | 13.2日(66.1%) | シリコンウェハー世界首位。電子材料事業だけで売上1兆円超 |
| SUMCO | 材料 | 25/12 | 4,097 | 0.3% | 641 | 東京・佐賀・宮崎 ほか | 17.8h | 15.4日(77.0%) | シリコンウェハー専業で世界2位。新工場の償却負担で最終赤字 |
| レゾナックHD | 材料 | 25/12 | 13,471 | 3.5%※2 | 1,026※1 | 東京・川崎・大分 ほか | 25.5h | 12.1日(60.6%) | 封止材など後工程材料に強み。半導体材料は過去最高益を更新 |
| 東京応化工業 | 材料 | 25/12 | 2,370 | 20.0% | 972 | 神奈川・静岡・熊本 | 28.8h | 13.6日(68.0%) | フォトレジストで世界首位級。EUV対応品でAI需要を獲得 |
| キオクシアHD | デバイス | 26/3 | 23,376 | 37.2% | 1,149※1 | 東京・横浜・三重・岩手 | 27.2h | 14.3日(71.7%) | NAND型フラッシュメモリ大手。営業利益が8年ぶりに過去最高 |
| ソニーセミコンダクタ ソリューションズ |
デバイス | 26/3 | 21,515※3 | 16.6% | 1,113※4 | 神奈川・熊本・長崎・山形 | 33.2h | 12.9日(64.5%) | CMOSイメージセンサー世界首位。TSMCとの提携で基本合意 |
| ルネサス エレクトロニクス |
デバイス | 25/12 | 13,212 | 15.2% | 750 | 東京・茨城・群馬・山梨 ほか | 26.6h | 10.9日(54.4%) | 車載マイコンで世界トップ級。2026年に入り四半期業績が急回復 |
| ローム | デバイス | 26/3 | 4,811 | 2.2% | 810 | 京都 ほか国内グループ各社 | 24.5h | 13.4日(67.1%) | パワー半導体・SiCが主力。東芝・三菱電機と事業統合を協議中 |
【表の見方と注記】
決算期:「26/3」は2026年3月期、「25/12」は2025年12月期、「25/6」は2025年6月期を指します。半導体業界は12月決算・6月決算の企業も多く、単純な同時点比較ではない点にご注意ください。
売上高・営業利益率:各社の決算短信・決算発表資料(連結)に基づき、営業利益÷売上高で算出。信越化学は会社公表値。
平均年収:各社の有価証券報告書「従業員の状況」記載の提出会社(単体)の平均年間給与。対象期は原則として決算期の欄と同じです。
残業・有給消化率:社員クチコミサイトOpenWorkの集計値(2026年7月時点)。企業が公式に開示している数値ではなく、回答者の属性に偏りが生じる可能性があります。参考値としてご覧ください。有給消化の「日数」は、年間付与日数を20日と仮定し、消化率から編集部が換算した参考値です(実際の付与日数は企業・勤続年数により異なります)。なお東京エレクトロンは、会社公表のサステナビリティデータで有給休暇取得率78.9%(2024年度)としています。
※1 持株会社(ホールディングス)単体の数値。対象人数が少なく管理職比率が高いため、事業会社の実態より高く出ます。
※2 会計上の営業利益率。同社が事業実態を示す指標として開示する「コア営業利益率」では8.1%。
※3 同社は非上場のため、ソニーグループの「イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)」分野の業績。
※4 ソニーグループ単体の有価証券報告書の数値(参考値)。
主な勤務地は代表的な拠点のみで、実際の配属は職種により大きく異なります。数値はいずれも2026年7月時点で公表されているものです。
- 営業利益率は「層」でくっきり分かれる:装置メーカーは20〜49%と極めて高く、材料は製品次第、デバイスは市況に左右されて0.3〜37%まで振れます。
- 高年収と長時間労働はセットではない:年収1,681万円のレーザーテックは残業38.7時間ですが、1,049万円のアドバンテストは16.3時間。同じ装置メーカーでも働き方は大きく違います。
- 残業が長い企業は、顧客対応や立ち上げ業務が多い傾向:ディスコ、レーザーテック、ソニーセミコンダクタソリューションズは、いずれも顧客ファブでの装置立ち上げや開発の山谷が大きい事業構造です。
- 同じ年でも明暗が分かれている:AI関連(アドバンテスト、キオクシア、東京応化)が最高益を更新する一方、EV向けのローム、設備投資期のSUMCOは苦戦しています。「半導体は好調」と一括りにできないのが2026年です。
3. 製造装置メーカー5社|日本が世界で勝っている領域
塗布・現像装置(コータ/デベロッパ)で世界シェア約9割という圧倒的な地位を持ち、エッチング、成膜、洗浄まで幅広く展開する総合装置メーカーです。2026年3月期は売上高が過去最高となる一方、研究開発費の増加などで営業減益となりました。翌期は上期だけで過去最高を見込むなど、AIサーバー向け需要を強く取り込んでいます。国内拠点が山梨・岩手・宮城・熊本と地方に厚いのが特徴で、勤務地の希望は早い段階で整理しておくべき企業です。
できあがった半導体が設計どおりに動くかを検査する「テスタ」の専業メーカーです。AI半導体は回路が複雑で検査時間が長くなるため、AI需要がそのままテスタ需要に直結します。2026年3月期は売上高が1兆円を突破し、営業利益率44.2%という驚異的な水準に達しました。海外売上比率が非常に高く、台湾・韓国・中国など顧客の所在地が明確なため、グローバルに動きたい人と相性がよい会社です。
ウェハーを切断するダイシングソー、薄く削るグラインダ、平坦に磨くポリッシャの3分野で世界的に高いシェアを持ちます。装置本体だけでなく、消耗品であるダイシングブレードも自社で作っているため、装置が売れるほど後から安定収益が積み上がるビジネスモデルです。AIチップの先端パッケージングで需要が拡大し、6期連続で過去最高を更新しました。平均年収の高さでも知られますが、その分だけ成果主義的な人事制度である点は理解しておく必要があります。
ウェハー洗浄装置で世界トップクラスのシェアを持つ京都の老舗企業です。前身は印刷関連の会社で、そこから半導体製造装置へ事業転換した歴史を持ちます。2026年3月期は減収減益となったものの、装置を納めた後のパーツ販売・保守・改造といった「ポストセールス」収益が伸びており、市況の谷を和らげる構造になっています。翌期は大幅な増収増益を計画しています。関西で働きたい理系学生にとって有力な選択肢です。
EUV露光で使うマスク(回路の原版)の欠陥を検査する装置を、事実上単独で供給している企業です。最先端の微細化に不可欠な工程を押さえているため、営業利益率は約49%と国内製造業でも突出しています。従業員数が比較的少なく、1人あたりの生産性が極めて高いのが特徴で、平均年収も1,681万円と国内最高水準です。中期経営計画では売上高4,000〜5,000億円、営業利益率35%以上を目標に掲げています。
4. 半導体材料メーカー4社|世界が日本に依存する領域
半導体シリコンウェハーで世界シェア首位、かつ米国の塩化ビニル樹脂でも首位という、まったく異なる2つの市場でトップを取る稀有な会社です。景気サイクルが異なる2事業を持つため業績が安定しやすく、2026年3月期も売上高営業利益率24.7%と、総合化学メーカーとしては例外的な高収益を維持しています。電子材料事業だけで売上1兆157億円・営業利益3,445億円と、それ単体で大手企業並みの規模です。応用化学・材料系の学生にとって最上位の志望先のひとつです。
シリコンウェハー専業として世界2位。事業が単一である分、市況の影響が業績にダイレクトに出ます。2025年12月期は、AI向け先端300mmウェハーの需要は好調だった一方、佐賀県の新工場立ち上げに伴う減価償却費の増加が重く、約14年ぶりの最終赤字となりました。「先行投資が先に費用化され、需要回復は後からやってくる」という装置産業の構造がそのまま表れた好例で、面接でも語りやすい事例です。
旧・昭和電工と旧・日立化成が統合して誕生した化学メーカーです。半導体・電子材料セグメントが売上の約4割を占め、封止材、銅張積層板、CMPスラリー、高純度ガスなど後工程材料に強みを持ちます。2025年12月期は全社では減収だったものの、半導体・電子材料セグメントのコア営業利益は過去最高を更新しました。会社全体の利益率と、志望セグメントの利益率が大きく異なる典型例なので、企業研究ではセグメント情報まで読み込む必要があります。
回路を焼き付ける工程に使うフォトレジスト(感光材)で世界首位級。EUV、ArF、KrFと世代ごとに製品を揃え、最先端ロジックからメモリまで幅広くカバーします。2025年12月期は売上高2,370億円・営業利益473億円で、いずれも過去最高を更新。増収率17.9%に対して営業増益率が43.2%と、売上が伸びると利益が跳ねる構造(営業レバレッジ)が効いています。神奈川本社に加え熊本にも拠点を持ち、国内半導体投資の恩恵を受けやすい位置にいます。
5. 半導体デバイスメーカー4社|市況の波を最も強く受ける層
旧・東芝メモリを源流とするNAND型フラッシュメモリ大手で、2024年12月に東証プライムへ上場しました。2026年3月期は売上高2兆3,376億円、営業利益は8年ぶりに過去最高を更新。特筆すべきは四半期ごとの振れ幅で、第4四半期だけで営業利益率が約60%に達しました。メモリはコモディティに近く、価格が需給で大きく動くため、業績の振幅が業界随一です。四日市・北上という大規模工場が主要な勤務地になります。
スマートフォン向けを中心にCMOSイメージセンサーで世界首位。2025年度のI&SS分野は売上高2兆1,515億円、営業利益3,573億円と過去最高益を更新しました。TSMCと次世代イメージセンサーの開発・製造で提携の基本合意を結ぶなど、製造の在り方も動いています。厚木・熊本・長崎・山形と地方の大規模拠点が中心で、「デバイスの設計から量産までを一気通貫で経験できる」数少ない国内企業のひとつです。
自動車向けマイコンで世界トップ級のシェアを持ちます。2025年12月期は売上収益1兆3,212億円・営業利益2,011億円ながら、買収関連費用などが響き最終赤字となりました。ただし2026年に入って四半期の営業利益率が急改善しており、車載・産業機器・AIインフラの需要回復局面に入っています。1社の業績を1年だけで判断すると読み違えることを教えてくれる企業で、面接では「どの期の数字を見ているか」を明確にして語ると説得力が増します。
京都に本社を置く総合半導体メーカーで、近年はSiC(炭化ケイ素)パワー半導体に大型投資をしてきました。しかしEV市場の成長が想定より鈍化し、2026年3月期はSiC関連を中心に1,936億円の減損を計上、最終赤字1,584億円となりました。売上高は増加し営業損益は黒字転換しているため、「本業は回復、過去の投資は整理」という局面と読むのが妥当です。東芝・三菱電機とのパワー半導体事業統合に向けた協議も進んでおり、業界再編の中心にいる企業です。
- Rapidus(ラピダス):2nm世代の先端ロジック量産を目指す国策色の強い新興企業。北海道・千歳に拠点を構え、新卒採用も実施。事業段階が他社と大きく異なるため比較表には含めていません。
- 三菱電機・東芝:パワー半導体の主要プレイヤーですが、いずれも半導体以外の事業比率が高い総合電機のため今回は対象外としました。ロームとの統合協議の行方は要注目です。
- KOKUSAI ELECTRIC、TOWA、荏原製作所:それぞれ成膜装置、封止装置、CMP装置の有力メーカー。装置志望なら併せて調べる価値があります。
6. 2026年の半導体業界トレンド5選|面接で語れる論点
① 需要の主役は完全にAIへ移った
データセンター向けのAIサーバー需要が、先端ロジック、HBM(広帯域メモリ)、エンタープライズSSDを押し上げています。この波を最も直接的に受けているのがテスタ(アドバンテスト)、後工程装置(ディスコ)、後工程材料(レゾナック)、レジスト(東京応化)です。逆に、スマートフォンやPC、自動車といった従来の需要は回復が緩やかで、「AI向けかどうか」で企業業績が分かれる年になりました。
② メモリ市況の振れ幅が過去にないレベルに
キオクシアの四半期営業利益率が60%に達したように、メモリは需給が締まると利益が爆発的に伸びます。一方で、メモリ価格の高騰は他業界のコスト増にもつながっており、実際にソニーはPS5の生産計画にメモリ調達の制約を織り込んでいます。半導体の市況が他産業に波及する構図は、志望動機の背景説明として使いやすい論点です。
③ パワー半導体は調整局面と国内再編
EV市場の成長鈍化により、SiCパワー半導体への先行投資が重荷になっています。ロームの巨額減損はその象徴で、同社は東芝・三菱電機との事業統合協議に入りました。成長が確実視されていた分野でも、需要の立ち上がりが数年ずれれば経営が傾く——技術と事業は別物であることを示す事例です。
④ 「シリコンサイクル」と設備投資の重さ
SUMCOの赤字は需要不振ではなく、新工場の減価償却が先行したことが主因でした。半導体は工場1つに数千億円規模の投資が必要で、投資判断から回収まで数年かかります。この時間差が業績の波を生みます。「なぜこの会社は今赤字なのか」を構造で説明できる学生は、面接で明確に差がつきます。
⑤ 国内投資と地政学
TSMCの熊本進出、ラピダスの北海道拠点、各社の国内新工場と、日本国内での半導体投資は継続しています。同時に、輸出管理や関税といった政策リスクが業績に直接影響する時代にもなりました。地方拠点での勤務機会が増えている点は、勤務地を重視する学生にとって重要な変化です。
7. 職種研究|半導体業界で理系はどんな仕事をするのか
「半導体業界に行きたい」だけでは志望動機になりません。同じ会社の中にもまったく性質の違う職種が並んでいます。主要な職種と、対応しやすい専攻を整理します。
| 職種 | 主な仕事 | 親和性の高い専攻 |
|---|---|---|
| プロセスエンジニア | ウェハー工程の条件設計、歩留まり改善、不良解析 | 電気電子・物理・応用化学・材料 |
| 回路設計 | ロジック/アナログ回路、マイコン、センサー回路の設計 | 電気電子・情報 |
| 装置開発(機械) | 搬送機構、真空系、精密ステージなどの機構設計 | 機械・精密工学 |
| 装置開発(電気・ソフト) | 制御基板、装置制御ソフト、画像処理アルゴリズム | 電気電子・情報・制御 |
| フィールドサービスエンジニア | 顧客工場での装置立ち上げ・保守・トラブル対応 | 機械・電気電子(学部卒も多い) |
| 生産技術 | 量産ラインの設計、自動化、工程改善 | 機械・電気・化学工学・経営工学 |
| 材料開発 | レジスト・スラリー・封止材などの配合設計と評価 | 応用化学・高分子・材料 |
| 品質保証・信頼性 | 信頼性試験の設計、市場不良の解析と再発防止 | 材料・物理・電気電子 |
| 技術営業/アプリケーション | 顧客の技術課題を理解し製品仕様に落とし込む | 理系全般(英語力が効く) |
※ 職種名は企業により異なります。同じ「プロセスエンジニア」でもデバイスメーカーと装置メーカーでは仕事の中身が変わる点に注意してください。
学科・専攻別の狙い目
- 電気電子:3層すべてに道があり、最も選択肢が広い専攻です。デバイス設計、プロセス、装置の電気制御、テスタのいずれにも接続します。
- 情報・コンピュータ系:装置制御ソフト、画像処理、EDAツール、歩留まりデータの解析など。近年はAIを用いた製造データ解析の需要が伸びています。
- 機械・精密:装置メーカーが主戦場。真空、搬送、精密位置決めといった要素技術がそのまま活きます。生産技術も有力です。
- 応用化学・材料・高分子:材料メーカーの本丸に加え、デバイスメーカーのプロセス職も狙えます。信越化学、東京応化、レゾナックは第一志望群になり得ます。
- 物理・応用物理:デバイス物性、計測・検査装置(レーザーテック、アドバンテスト)と相性が良好です。
- 経営工学・数理系:生産管理、SCM、品質工学など。半導体は工程数が多く、統計的手法の出番が大きい産業です。
8. 企業選びの3つの軸|「成長産業だから」で終わらせない
軸1:業績の振れ幅をどこまで受け入れられるか
比較表のとおり、営業利益率が0.3%の会社と48.8%の会社が同じ業界に並んでいます。メモリのように四半期で業績が倍増する世界を面白いと感じるか、材料メーカーのように腰を据えて数年単位の開発をしたいか。この好みは適性そのものであり、志望動機の芯になります。
軸2:勤務地を現実的に想定できているか
半導体の主要拠点は、四日市、北上、那珂、伊万里、熊本、山梨、岩手など地方に広く分布しています。本社勤務を想定して入社し、配属で戸惑うケースは少なくありません。会社説明会では「入社3年目の社員の配属実績」を具体的に質問するのが有効です。
軸3:顧客との距離をどう取りたいか
フィールドサービスエンジニアのように顧客工場に張り付く職種もあれば、研究開発拠点で腰を据える職種もあります。海外顧客が中心の装置メーカーでは、若手のうちから海外出張が発生する職種も一般的です。「技術に関わりたい」の中身を、人との距離感まで言語化しておくと、面接での説得力が変わります。
9. 選考対策|志望動機と面接で問われること
志望動機は「3段構え」で組み立てる
- なぜ半導体業界か:産業の成長性だけでなく、自分の専攻・研究とどう接続するかを述べる。
- なぜこの層(デバイス/装置/材料)か:ここを飛ばす学生が非常に多く、書けるだけで差がつきます。
- なぜこの会社か:シェアや技術の独自性を、直近の決算やニュースと結びつけて語る。
技術面接で聞かれやすいこと
- 研究内容を、専門外の面接官にも分かるように3分で説明する(ほぼ必ず問われます)
- 研究で最も苦労した点と、その解決プロセス
- 研究テーマと志望職種のつながり(直結していなくても構いません。問題の立て方・進め方が見られています)
- 当社の製品で知っているものは何か/なぜその工程に興味を持ったか
逆質問の例(企業研究の深さが伝わるもの)
- 「後工程の重要度が上がっている中で、御社の技術リソースの配分はどう変わっていますか」
- 「市況の谷の時期に、若手の育成方針はどのように変わりますか」
- 「入社3年目の方は、どのような拠点・職種に配属されていますか」
- 院卒:研究職・デバイス設計・材料開発など、専門性を直接活かす職種で採用枠が厚い傾向にあります。
- 学部卒:フィールドサービスエンジニア、生産技術、品質保証、技術営業などで採用が活発です。「学部卒だから半導体は無理」ということはありませんが、志望職種の採用実績は事前に確認しておきましょう。
10. よくある質問(FAQ)
半導体は景気変動が激しいと聞きます。就職先として不安はありませんか?
変動が大きいのは事実です。ただし層によって受け方が異なり、一般にメモリ系デバイスが最も振れ、装置がそれに続き、材料は相対的に緩やかです。加えて、多くの企業が市況の谷でも研究開発と採用を継続しています。不安がある場合は、複数事業を持つ企業(信越化学など)や、保守・消耗品のストック収益を持つ企業(ディスコ、SCREENなど)を検討すると安定性が高まります。
電気電子系でないと不利ですか?
そんなことはありません。装置メーカーは機械・制御・ソフトの人材を大量に必要としますし、材料メーカーは化学系が主戦力です。むしろ「自分の専攻が半導体のどの工程に効くのか」を説明できるかどうかが評価を分けます。
平均年収が高い会社を選べば間違いないですか?
平均年収は「収益構造と社員構成の結果」であって、働きやすさの指標ではありません。特に持株会社(○○ホールディングス)の数値は、対象が管理部門中心の少人数であるため実態より高く出ます。年収を見るなら、有価証券報告書の平均年齢・平均勤続年数とセットで確認してください。
装置とデバイス、将来性が高いのはどちらですか?
どちらか一方が勝つ構図ではありません。装置・材料は「どのメーカーが勝っても売れる」ポジションで安定性がある一方、デバイスは当たった時のリターンが大きい。近年は装置・材料の収益性が際立っていますが、これは日本企業がその領域で強いシェアを持っているという事実の裏返しでもあります。
英語力はどの程度必要ですか?
職種によります。海外売上比率が9割を超える装置メーカーでは、技術資料の読解と会議での実務英語が早い段階で必要になる職種があります。一方、国内工場のプロセス職では入社後に学ぶ余地が大きい。エントリー前に、志望職種の海外関与度を説明会で確認しておくと安心です。
11. まとめ
- 半導体業界はデバイス/製造装置/材料の3層構造。まずどの層を志望するかを決めると企業研究が一気に進みます。
- 2026年はAI向けが好調、EV向けパワー半導体は調整局面という二極化が鮮明です。「半導体は好調」で片づけないことが重要です。
- 日本企業の国際競争力は製造装置と材料で特に高く、営業利益率にもそれが表れています。
- 平均年収の高さは収益構造の結果です。勤務地・職種・業績変動の受け止め方の3軸で自分の適性を照らし合わせてください。
気になる企業が固まったら、次は職種研究とエントリーシートの準備です。関連記事も併せて活用してください。
12. 出典・参考
■ 業績数値(各社IR)
- 東京エレクトロン「2026年3月期 決算短信」「決算説明会資料」
- アドバンテスト「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕」
- ディスコ「2026年3月期 決算短信」
- SCREENホールディングス「2026年3月期 決算短信」
- レーザーテック「2025年6月期 決算短信」、同社「業績報告」
- 信越化学工業「2026年3月期 決算短信」、同社「数字で見る信越化学」
- SUMCO「2025年12月期 決算短信」
- レゾナック・ホールディングス「2025年12月期 決算説明資料」
- 東京応化工業「2025年12月期 決算短信」「決算説明資料」
- キオクシアホールディングス「2026年3月期 決算発表資料」
- ソニーグループ「2025年度(2026年3月期)連結業績」
- ルネサスエレクトロニクス「2025年12月期 決算短信〔IFRS〕」
- ローム「2026年3月期 決算短信」
■ 平均年収・働き方
- 各社 有価証券報告書「従業員の状況」(提出会社・単体)
- 東京エレクトロン サステナビリティデータ(有給休暇取得率)
- OpenWork(残業時間・有給休暇消化率の集計値/2026年7月時点)
■ 参考リンク(外部)
- 東京エレクトロン 投資家向け情報
- ディスコ 株主・投資家情報
- SCREENホールディングス 財務ハイライト
- レーザーテック 業績報告
- 信越化学工業「数字」で見る信越化学
- 東京応化工業 株主・投資家情報
- 経済産業省(半導体・デジタル産業戦略)
※ 本記事の数値は2026年7月時点で公表されている情報に基づきます。最新の状況は必ず各社の公式IR情報をご確認ください。
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