テルモ・オリンパスをはじめとする国内大手の医療機器メーカー6社を、最新決算(2026年3月期)の売上高・営業利益率、有価証券報告書の平均年収、そして働き方(残業・有給)まで、1枚の比較表で横並びにしました。就職支援の視点で、業界構造と各社の違いを整理します。
- 医療機器業界は「高い参入障壁」「景気に左右されにくい安定需要」「海外売上比率の高いグローバル市場」が魅力。理系の専門性を活かしやすい業界です。
- 同じ「医療機器」でも収益構造は大きく異なり、カテーテル・内視鏡のような高収益領域(利益率15〜25%超)から、透析・ディスポ製品の薄利多売型(同5〜8%)まで幅があります。年収も650万〜1,050万円とレンジが広いのが特徴です。
- 「製品領域(治療系/診断系・機器/消耗品)」「海外比率」「勤務地」の3軸で見ると、自分に合う企業が見えやすくなります。
国内大手医療機器メーカー6社 一覧比較表(2026年版)
売上高の大きい順に並べています。横にスクロールすると全項目を確認できます。
| 企業 | 売上高 (2026/3期※1) |
営業 利益率 |
平均年収 (有報※2) |
主要勤務地 ※3 |
月残業 (参考※4) |
有給取得日数 (取得率)※4 |
主力事業・特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| テルモ | 1兆1,319億円 | 約15.6% | 778万円 | 東京・神奈川 山梨・静岡 |
約27時間 | 13.0日 (65.0%) |
心臓血管カテーテル(TIS)で世界大手。国内首位、海外比率約8割のグローバル企業 |
| オリンパス | 1兆107億円 | 約9.6% | 1,046万円 | 東京・福島 青森・長野 ほか |
約21時間 | 11.5日 (57.4%) |
消化器内視鏡で世界シェア約7割。医療特化。※26/3期は構造改革費用等で一時的に減益(調整後の営業利益率は約14%) |
| ニプロ | 6,605億円 | 約5.7% | 659万円 | 大阪(摂津) ほか全国 |
約22時間 | 12.9日 (64.5%) |
透析・注射器などの医療機器+医薬品+容器の多角化。規模は大きいが薄利多売型 |
| シスメックス | 5,000億円 | 約10.4% | 913万円 | 兵庫 (神戸・加古川) |
約23時間 | 13.5日 (67.5%) |
検体検査(血球計数=ヘマトロジー)で世界首位のIVD(体外診断)専業。※26/3期は中国等で減益 |
| 日本光電 | 2,351億円 | 約8.0% | 926万円 | 東京(新宿) 埼玉・群馬 |
約36時間 | 7.2日 (36.1%) |
心電計・患者モニタ・AEDなど生体計測で国内有力。※営業・サービス職は繁忙になりやすい |
| 朝日インテック | 1,200億円 (2025/6期) |
約25.1% | 695万円 | 愛知(瀬戸) ほか海外 |
約25時間 | 12.8日 (63.8%) |
PCI/EVT用ガイドワイヤーで世界的シェア。高収益・成長中。平均年齢34.6歳と若い |
- ※1 売上高:各社2026年3月期の連結実績。テルモはIFRSの「売上収益」、朝日インテックは決算期が異なるため2025年6月期の実績。営業利益率=営業利益÷売上高で編集部算出。
- ※2 平均年収:各社の有価証券報告書(単体)の平均年間給与。原則2025年3月期、朝日インテックは2025年6月期。連結ではなく単体(親会社)ベースのため実感値と差が出る場合があります。
- ※3 主要勤務地:本社および代表的な研究・生産拠点。実際の配属は職種により全国・海外に分かれます(代表例のみ)。
- ※4 月残業時間・有給取得日数:口コミサイトOpenWork(社員クチコミ平均)の参考値。日数は付与20日を仮定した概算(編集部推測)で、カッコ内は取得率。部署・職種で大きく異なり、有報の開示値とは乖離することがあります。目安としてご覧ください。
各社の特徴と就活視点(売上高順)
各社名をタップすると、強み・年収・就活視点が開きます。
1テルモ ― 売上1兆円超、国内医療機器の「首位」心臓血管カテーテルで世界大手/海外比率 約8割
2026年3月期の売上収益は前期比9.2%増の1兆1,318億円、営業利益は同11.8%増の1,763億円で、いずれも過去最高を更新。売上の約8割を海外が占め、成長を牽引するのは血管内治療(カテーテル)を扱うインターベンショナルシステムズ(TIS)事業です。
- 強み:心臓血管領域のグローバル競争力、圧倒的な安定性と規模、海外キャリアの機会。
- 就活視点:精密なものづくりを支える機械・材料・電気系、生産技術、品質保証、臨床開発、海外営業まで職種は幅広い。「グローバルで働きたい理系」の筆頭候補。
2オリンパス ― 消化器内視鏡で世界シェア約7割の「医療特化企業」映像事業を売却し医療に特化/26年3月期は一時費用で減益
かつてのカメラのイメージから大きく転換し、映像事業を売却して医療機器に特化。2026年3月期は売上高が初めて1兆円を突破(1兆106億円)した一方、営業利益は前期比40.2%減の971億円と大幅減益でした。これはグローバルな組織再編に伴う構造改革費用やFDA関連の一時的要因によるもので、調整後営業利益率は約14%と本業の収益力は依然高水準です。
- 強み:消化器内視鏡の世界的ブランドと圧倒的シェア、6社で最高の平均年収。
- 就活視点:光学・精密機械・画像処理・ソフトウェアなど理系の専門性が直結する開発職が多い。一時的な業績のブレより「内視鏡という強い柱」で長期を見る視点が大切。
3ニプロ ― 透析・注射器から医薬品まで、規模で勝負する多角化企業売上規模は大きいが薄利多売型/全国・海外に生産拠点
2026年3月期は売上高6,605億円(前期比2.5%増)、営業利益376億円(同41.5%増)と増収増益。ダイアライザ(透析器)や注射器などの医療機器に加え、医薬品(後発薬)、ガラス容器などのファーマパッケージングまで手掛ける多角化が特徴です。
- 特徴:営業利益率は約5.7%と薄利多売型。平均年収659万円は6社では控えめ。
- 就活視点:透析・輸液という生活を支える医療インフラに関われる。全国・海外の生産拠点が多く、生産技術・品質・化学・薬学系の活躍余地が広い。「規模の大きい安定企業で幅広く経験を積みたい」人向け。
4シスメックス ― 血液検査で世界首位、神戸発のIVDグローバル企業装置+試薬+サービスのリカーリング型/関西勤務で人気
血液や尿を分析する検体検査(IVD=体外診断)専業で、血球計数(ヘマトロジー)分野は世界シェア首位。2026年3月期は売上高5,000億円、営業利益518億円(前期比40.8%減)と、中国の医療費抑制策や国内需要減・為替影響で減益となりましたが、米州・欧州は堅調でグローバル成長の基盤は健在です。
- 強み:診断領域のグローバルシェア、神戸を拠点とした研究開発力、試薬・サービスのリカーリング型ビジネス。
- 就活視点:生物・化学・臨床検査・情報系が活きる。試薬開発、装置開発(機械・電気)、データサイエンス、海外事業まで。関西(神戸)勤務を志向する理系に人気。
5日本光電 ― 心電計・患者モニタで国内トップクラス病院・救急の社会インフラ/技術サービス職も柱
生体情報の計測(心電計・脳波計・患者モニタ)やAED・除細動器などを手掛ける国内有力メーカー。2026年3月期は売上高2,351億円(前期比4.3%増)、営業利益187億円(同9.5%減)と増収減益で、賃上げ・研究開発・M&A関連費用が利益を押し下げました。
- 強み:国内の病院・救急領域で高いシェア、社会インフラ性の高い製品群、926万円と高めの平均年収。
- 注意点:営業・サービスエンジニア(FSE)職は病院・学会対応で繁忙になりやすいという声も(表の残業参考値が高めなのはこのため)。
- 就活視点:電気・電子・情報・生体医工学系が直結。全国の医療現場を支える技術サービス職も重要な柱です。
6朝日インテック ― ガイドワイヤーで世界的シェア、高収益の成長企業営業利益率25%超/平均年齢34.6歳と若い
心臓・血管の治療(PCI/EVT)で使う医療用ガイドワイヤーで世界的シェアを持つ愛知発のグローバルメーカー。2025年6月期は売上高1,200億円(前期比11.6%増)、営業利益301億円(同35.9%増)と高成長で、営業利益率は約25%と6社で最高です。
- 強み:ニッチトップの高収益体質、海外売上比率の高さ、成長性。平均年齢34.6歳と若く、キャリアの立ち上がりが早い環境。
- 就活視点:極細ワイヤー加工を支える機械・材料・金属系、生産技術、海外営業が中心。「若いうちから成長企業でグローバルに挑戦したい理系」向け。勤続年数が短めで入れ替わりもある点は要確認。
比較表に含めなかった主要プレイヤー
医療機器に強みを持ちながら、多角化・非上場・大企業の一事業などの理由で単純比較が難しい企業も、就活では重要な選択肢です。
HOYA
内視鏡用部材・眼内レンズ等の「ライフケア事業」を持つ一方、半導体用マスクブランクスも柱の多角化企業。連結売上9,477億円・営業利益2,852億円(利益率約30%)だが、これは半導体材料の高収益が寄与しており純粋な医療機器メーカーとの単純比較は不可。単体平均年収は約924万円。
キヤノンメディカルシステムズ
キヤノン傘下(非上場)。CT・MRI・超音波診断装置など画像診断機器で国内大手。本社は栃木県大田原市。
富士フイルム/ヘルスケア
富士フイルムグループのヘルスケア事業として、X線・内視鏡・超音波などの画像診断、再生医療、医薬まで幅広く展開。
島津製作所
分析・計測機器が主力だが、X線・血管撮影装置など医用機器でも大手。京都発のグローバル企業。
日機装
血液透析システムで国内有力。ただし航空宇宙・工業事業も持つ多角化企業で、医療は一部門。
マニー
栃木・宇都宮発。眼科ナイフ・手術用縫合針・歯科用器具で世界シェア上位の「隠れ優良企業」。営業利益率30%前後と高く、単体平均年収は約767万円。
医療機器業界を見るときの3つの視点
① 「治療系 × 診断系」「機器 × 消耗品」で分類する
体を治す治療系(カテーテル・内視鏡・透析)と、状態を調べる診断系(検体検査・画像診断・生体計測)では、求められる技術も競合も異なります。さらに装置本体を売るビジネスと、繰り返し購入される消耗品・試薬(リカーリング)では収益の安定性が違います。「テルモ=治療系・消耗品」「シスメックス=診断系・試薬リカーリング」のように地図の上に置いてみましょう。
② 海外売上比率 = グローバルキャリアの多さ
医療機器は規制対応(各国の承認)が重い一方、日本メーカーの技術は海外で高く評価されています。テルモ・オリンパス・朝日インテックのように海外比率が高い企業ほど、若手のうちから海外と関わる機会が多くなります。「英語を使って働きたいか」は志望動機づくりの軸になります。
③ 規制・品質という“地味だが要”の仕事
医療機器は人の命に関わるため、薬機法に基づく承認・品質管理(QA/QC)・薬事(RA)が事業の根幹です。派手さはありませんが、理系の知識×正確性が強く求められ、専門性を築きやすい職種でもあります。
医療機器メーカーの就活で押さえるべきこと
「なぜ医療機器か」を自分の言葉で
安定性だけを理由にすると弱くなります。社会貢献実感 × 理系の専門性を、自分の研究・経験と結びつけて語れると強い志望動機になります。研究内容は「非専門家にも伝わる形」でまとめる練習を。開発・研究職は院卒が有利な領域もあるため、院進の有無も戦略的に考えましょう。規制産業ゆえ、説明会・インターンで得られる情報の価値が高いのも特徴です。

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